小田原魚市場水揚げ概況
「米神」定置:マイワシ 6トン、アジ 570キロ
「石橋」定置:休漁
「 岩 」定置:ブリ・ワラサ 950キロ、アジ 150キロ
「原辰」定置:ウマヅラハギ、メジナ ほか
「江の安」定:ブリ、マルアジ ほか
「二宮」定置:ブリ・ワラサ 1.6トン、イシダイ 480キロ
「福浦」定置:休漁
「大磯」定置:イシダイ 230キロ、マイワシ 220キロ、シリヤケイカ 80キロ
伊豆方面からは、
「網代定置」:ブリ・ワラサ 1.2トン
東方面からは、
「江の島網」:クロダイ、サバ ほか
「平塚定置」:イシダイ、ヤリイカ ほか
ある春の日のことだった。
魚市場は、朝からそわそわしていた。
まるで何か特別なことが起こる予感に包まれていたのだ。
「イワシが大漁だってさ」
「伊豆からブリが来るらしいよ」
誰かがそうつぶやいた。別の誰かがそれを聞いて笑った。
笑ったが、目は真剣だった。
「ブリ・ワラサ」大漁。「イシダイ」が各地で爆獲れ。
この知らせはまるで春の使者。ドレス姿でないのが惜しいが、彼らは間違いなく大事な知らせを運んできてくれる。
天気さえ回復すれば、海も機嫌を直し、また忙しない日常がやって来るだろう。
魚市場は生き物だ。魚が来るたびに歓声を上げ、人が去るたびに静かになる。
そして、ぽつりとつぶやく声が聞こえた。
「魚を売りさばく我々が、魚を選んでいるようでいて、実は選ばれているのかもしれない・・・」
その言葉に場内はしんと静まった。
風が一度だけ吹き抜けて、箱の氷がコロリと溶け落ちる音がした。
そして誰かが小さく笑った。
春はもう、終わろうとしている。
.
