小田原でこの季節の贈り物と言えば、やはり「蒲鉾」は外せません。
折角、贈るなら良い品物を送りたいと言うことで、知る人ぞ知る原料と職人技にこだわった逸品があります。
そして、何を隠そうその原料となる魚がコチラ(写真上)。
※下は「カゴカマス」
小田原では「オキギス」と呼ぶ人が多いですが、正式名称は単に「ギス」です。
魚の形はなんとなく沿岸に棲息する「キス」に似ている気がしますが、そこから連想された名前なのでしょうか。
「KISS」と言えば「デトロイト・ロック・シティ」ですけど、「ギス」と言うと「オダワラ・カマボコ・シティ」の開祖的存在と言えるのかも知れません。
その昔・・・
「キンメダイ釣りをしているとコイツが沢山釣れるけど、どうしよう?」
「食べても小骨が多いし、食べにくいなあ。」
「売っても値段も安いし、何とかならんかね。」
「え〜い、こうなりゃすり潰してしまえ!」
「あれ?すんばらしいスリミが出来ちゃった。」
ということで、明治期の小田原漁業の水揚げ記録によれば、「ギス」は結構獲れていたそうです。
かつては大量に獲れていたらしいですが、いつしかその量も減り、時代の変遷によって「小田原蒲鉾」の原料は安定供給される「グチ」や「スケトウダラ」へと代わり、「ギス」は昔はもてはやされたけど、今は用なしの一発屋芸人のような存在となってしまったのでした。
今では、ほぼ価値の無い魚として雑魚扱いしかされなくなった「ギス」。
それでも深場で釣りをすると、時たま現れるつぶらな瞳で面長の憎めない顔。
その陰キャにスポットライトが当たる季節。
それがこの年末なんですね。
一年に一度の晴れ舞台。
その意味で「小田原蒲鉾」も同じかも知れませんが・・・
ちなみにその蒲鉾。いえ「御蒲鉾」と呼びます。
今年の分はすでに完売したと言うことです。
※年寄りの魚屋さんや仲買人の話によると、昔、蒲鉾屋から出た「ギス」の頭(スリミにする前に切除する)を貰って来ては、煮付けたものを子供の頃によく食べたと言う。柔らかい独特の食感で大変美味しいそうである。
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