小田原魚市場水揚げ概況
「米神」定置:マルソウダ 6.2トン、ヤマトカマス 1トン、アカカマス 210キロ、イサキ 130キロ
「石橋」定置:ヤマトカマス 520キロ ほか
「 岩 」定置:マルソウダ 3.1トン、ヤマトカマス 250キロ、ボラ 220キロ、ヒラソウダ 130キロ、ヘダイ 120キロ
「原辰」定置:ヒラソウダ 360キロ、ヤマトカマス 160キロ
「江の安」定:マルソウダ 360キロ、ヤマトカマス 350キロ、ヒラソウダ 130キロ
「二宮」定置:サバ、アジ ほか
「福浦」定置:イナダ 220キロ、小サバ 190キロ、アジ・小アジ 100キロ、イサキ 100キロ
「大磯」定置:ヤマトカマス 470キロ、ヒラソウダ 240キロ、小アジ 100キロ
東方面からは、
「江の島網」:サバ 300キロ ほか
潮流が狂気じみた早さで流れ、海面は墨汁のような暗く不穏な色の渦を描いていた。
定置網は潮流に対して無力だ。激しい流れが網を捻り、膨らませ、魚を捕らえるという役割からその本質を剥奪していた。漁師たちは潮に対して逆らう術を持たず、ただ祈り、待ち続けるしかなかった。重く垂れ下がった空、風に吹かれ波は乱れ、定置網は不気味な沈黙を続ける。
この状況を彼は冷徹な眼光で見つめていた。網を動かすその手は静かだが、鋼のような意思が見て取れる。潮の流れ、風の変化、全てを計算に入れていた。やがて一瞬の静寂が訪れた。潮が止まったのだ。
その時を見逃さなかった彼は無言で合図を送り、網を引き上げる。その動きは無駄がない、まるで彼自身が網と一体化しているかのようだ。彼の表情は変わらず、眉一つ動かさない。漁師たちが網を引き上げると目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。網一杯に「マルソウダ(ウズワ)」が渦を描いていたのだ。
スナイパーである彼にとって、待つことこそが勝利の鍵であった。潮待ちの長い時間が実った瞬間であったが、彼にとってはただの計算通りに過ぎなかった。静かにその場を立ち去る彼の背中には、漁師たちの尊敬と畏怖の念が漂う。
しかし人間である以上、自然を掌握することはできない。それを知る者こそ、海を制する者である事を忘れてはならない。
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2024年09月28日
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