北風が相模湾を叩き、どこの網も軽く、箱もまばら。
冬の海は気まぐれで、魚も口を閉ざす季節。
それでも夜明け前、港に灯りを入れ、黙って沖へ出る漁師がいる。
年末のせわしなさに、注文と値段に悩みながら魚と向き合う魚商がいる。
儲かるだの、厳しいだの、そんな理屈は後回し。
今日の一網、今日の一箱に、暮らしと誇りを預けて生きている。
寒さに手をかじかませながらも、競り場に立てば背筋を伸ばし、
「あるもので勝負だ」と、目だけは決して曇らせない。
そして「赤城の山も今宵限り」とは申しますが、小田原には、まだ切り札が残っておりました。
「小田原アジ」という、強い味方があったのだ。
派手さはなくとも、確かな旨さ。
少ない冬の水揚げの中で、黙って魚市場を支える地魚の底力。
この一尾がある限り、小田原は沈みません。
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